とある新人傭兵のお話

 

傭兵になる事を夢見て幾年月…機体を買うため毎日働いてコツコツ貯金する日々‥‥

だがそれも今日までだ___ようやく…俺の夢が叶う

今日から俺は傭兵として生きていく!

俺は期待に胸を膨らませながらショップへと向かった

 

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店長!小型量産機を売ってくれ!

◇店長「‥‥予算は?」

値段は事前に調べてある…キッチリ500万用意してきた

(うーん無骨な店構えに片足が義足の杖をついた強面おっさん…これは信頼できるッ)

◇店長「それはお客さんの全財産で?」

そうだけど…それが何か?金はあるんだから早く売ってくれよ

◇店長「‥‥‥‥ついて来な」

俺は言われるがまま、店長の後をついていく

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 奥の格納庫があるエリアへ入った店長と俺の眼前に___

___小型量産機の姿が飛び込んできた

おおっー!これが俺の小型量産機!?


 

だが店長は小型量産機の前を通り過ぎ__さらに奥へと歩いていく

え?ちょっと…これが俺の機体じゃないの?

 

◇店長「お客さんに売る機体はこれだ」

俺の目に飛び込んできたのは___

 

 

 


 

小型量産機よりもさらに小さい、車輪の付いた機体だった

 

ええ…ナニコレ…すっごい弱そう

あのさぁ!俺は!こんなガラクタ買いに来たんじゃないんだよ!

◇店長「お客さん あんたに売れる機体は…うちじゃこれしか無いよ」

 

 

◇店長「確かに500万あれば小型量産機は買える…だがそれで終わりだ」

◇店長「武器とその弾薬は?燃料は?機体を置いておく場所は?」

◇店長「買ってからも金は要るんだよ こいつらには…な」

くっ…う…それは…最初は借金してなんとか___

 

◇店長「借金してどうにか動かせたとして」

◇店長「機体が壊れたらどうする 修理費を払えるのか?」

◇店長「お客さん‥‥機体が壊れた金無し傭兵に金貸すバカはいねえんだ」

◇店長「そうなりゃ借金と動かねえ鉄くずだけが残る それをお望みかい?」

 

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‥‥一理ある…あるけど…この目の前にあるポンコツでも結果は同じだろ?!

◇店長「確かにコイツは恰好が悪い…だがなお客さん 傭兵ならクレバーに物事を考えな」

◇店長「こいつは前進と後退しかできねえ4輪だし 腕の片方は肘がねえときてる」

◇店長「だが!左右の回転数を変えれば方向転換は可能!細かい作業は片腕でも出来なくはない!」

 

◇店長「特筆すべき点は小型機に比べてメンテ代が1/3以下と驚異的なランニングコスト!」

◇店長「拡張性は小型機のままだから金が貯まったら改造もラクラク!」

◇店長「それに扱いが人型兵器じゃなくて特殊車両だから税金も安い」

◇店長「小型機よりコンパクトボディで車両扱いだから___」

 

◇店長「コンビニの駐車場にだって停められちゃう!」

お…おおっ!…この機体…結構いいかも…?

 

◇店長「マシンガンがセットで付いているから追加で武器を買う必要はありません!」

◇店長「ですが今買うなら___」

 


店長「なんと!ショットガンがセットで付いてくる!」

◇店長「もちろん値段はそのままだ」

えー?!すごいお得!…でもお高いんでしょう…?


◇店長「通常価格265万‥‥それを今日限り!今日限りの特別価格で!なんと…250万!」

◇店長「250万でこのリーズナブルな機体をご提供させて頂きます!どうですお客さん!」

やっ安い!!買うよ俺!この機体買う!

◇店長「お買い上げありがとうございます」

◇店長「お客さん傭兵登録はまだでしょう?各種手続きの方法をお教えしますよ」

サービスいいねえ店長!お願いします!

 

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ー数週間後ー


だ・・・騙された!!!!

なんだよコレ?!

確かに方向転換はできるけどさぁ!

速度出てると小回りがまったく利かねえよ!最悪スピンして事故る!!


それに腕の長さが左右で違うからか腕を直感的に扱えない…

荷物運搬する時とか超やりづらい…


 

それに右腕のアームは保持力恐ろしく貧弱…クレーンゲームのアームか?

そのせいで狙いがうまく付けられない!!

このまえ敵に奇襲をかけたら逆にこっちが死にかけたッ!

 

それにさぁ

 


◇整備士「あーっ…これ…特殊車両で申請出してますね…」

◇整備士「2脚に換装すると人型兵器扱いになりますが…よろしいでしょうか」

___ブースターや脚部パーツ取り付けたら人型兵器扱いになるじゃねーーか!?

くそおおおおおおおお!!!!


・・・でもお金ないからこれに乗るしかない・・・

 


クソオオオオオオオオ!!!!

俺は!絶対に!

カッコいい機体を手に入れてやるーーーー!!!!


___新人傭兵の苦難は続く…

 

 

 

 

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 ・・・

 

◇新人傭兵がゴミを買わされた感じに見えるけど

◇そうでもないんだこれが!

◇店長の言葉に嘘はないんだ

◇あのまま新人傭兵が小型機量産機買ってたら間違いなく借金返せず破綻してる

◇・・・性能に関しては

◇肘がないから大雑把にしか狙いが付けられない…なので狙いつけなくても当たるショットガンをサービスしたし

◇速度が出ていると小回りが利かない点も…任務を市街戦に限定すれば建物が邪魔でそもそも速度が出せないから問題にならない

◇傭兵ならクレバーに物事を考えないとな!



新人傭兵「また新人を騙そうとしてる…」

◇店長「おやいらっしゃい!いいパーツ入荷したよお客さん!」



とある新人傭兵のお話ー完ー